マフラー談義

「ねぇ竜児、どうして>>449 とか>>455 はマフラー、マフラーって言ってんの?」
「おう、そりゃお前、作品中でマフラーが重要な意味を持ってるからだろ」
「へ?重要な意味なんてあったっけ」
「おま…あのなぁ。まじで気づいてなかったのかよ。しょうがねぇな。じゃ説明してやるから聞いてろ」
「なによ、偉そうな顔しちゃって。偉犬」
「なんだそりゃ。いいか?マフラーが出てきたのは6巻の生徒会町戦だ」
「変換間違ってる」
「うるさい。生徒会長戦だ。このとき、登校中に寒い寒い言ってるお前に、俺がマフラーを巻いてやるのが初出なんだが、結び方が特別だろ」
「ぐるぐる巻きにして殺そうとしたのよね」
「違う!男物が長すぎるから、多めに巻いた後、車に引っ掛けられないように後ろで団子結びにしたんだよ」
「かっこわる」
「いわゆる大河巻きだ」
「へー。世間ではそんな風に呼ばれてるんだ」
「いや、これ書いてる奴がそう呼んでるだけ」
「…」
「で、このシーンは単にマフラーを貸したってだけじゃない。重要なことがいくつか暗喩されてる」
「ぷぷぷ。あんよだって」
「暗喩だ。とにかく、普通ではなくお前用に気遣った巻き方は、ぶつぶつ言いながらお前を気遣ってる俺の気持ちを暗喩している。で、マフラーはお前にとって俺を暗喩してるんだ」
「なにそれ」
「5巻の終わりで俺が櫛枝と近づいたことに、お前は気を遣って俺たちから距離をとろうとするんだよ。で、横にいなくなった俺の代償として無意識にマフラーに顔をうずめてる」
「けなげよねぇ、私って」
「気を遣いすぎなんだよ。もっと素直になれ」
「なによ。でも、考えすぎじゃない?」
「このシーンだけ取り出してそう解釈すれば考えすぎだ。つーか。きもい。だが、夜の土手の上のシーンが続く」
「あんたが北村君殴るって飛び出したのを、私が追いかけたシーンね」
「おう。あんな夜に一人でふらふらしやがって。危ないだろ」
「大丈夫よ。私にかなうものなんかいないわ」
「馬鹿野郎。お前になにかあったら俺はどうやって生きていけばいいんだ」
「えへへ。竜児怒ってる」
「で、追いついたお前は、なぜ飛び出していったのか俺に聞くが、俺は答えない」
「けち」
「普段ならお前の回し蹴りが炸裂しても不思議じゃないんだが、そのかわりにお前は俺をくびり殺そうとする」
「マフラー返したのよ」
「そうそう。そのときに、お前も俺に大河巻きするんだよ」
「少年巻きとかマフィア巻きでもいいのにね」
「ここで最初の『気遣い』解釈がやっと成立する。ようするに、普通なら怒るお前が、かわりにマフラーを巻いてくれてるのは『あんたが何かいえない事を抱えているのは知っている。でも、聞かないことにする』っていうお前の気遣いの暗喩なんだよ」
「やっぱり考えすぎな気が…」
「そうかもしれない。この巻では初期の能天気設定が薄らいで、俺もお前もそれぞれ壁とか悩みを持ってるんだよな。でも、信頼できる相手としてお互いを大事に思い始めている。そして、互いへの優しい気持ちの表れとしての大河巻きなんだ」
「ふーん。やっぱりきもい」
「まだある。最初にお前が俺の代償としてマフラーをしていると言ったけど、土手のシーンでは俺がお前の代償としてマフラーをしている」
「そうなの?」
「この巻までは俺もお前も、手すら握れない間柄だ」
「1巻の準備体操で握ってた。ていうか、あんた私が階段から落ちたとき…」
「そういう、当然の状況じゃなくて、お互いの心の交流の結果として手を握るまでいたっていなかったってことだよ」
「考えすぎよねぇ、竜児って」
「うるせぇ。たとえば土手のシーンの前だが、夜中に二人でコンビニに行くシーンがある」
「私が泣いちゃったところだ」
「そう。あの時、俺はお前の袖を引っ張ってる。元気付けてやりたくて、ようやく手を握るんだな」
「それまで単に私に冷たかったんじゃないの?」
「馬鹿言え。村瀬から電話もらったあと、俺は『大河は北村のために泣いたんだ』って怒ってたんだぞ。この巻ではだんだんお前を大事に思う気持ちが強くなってる」
「…」
「うれしそうだな、おい」
「だって…えへっ」
「とにかく、ようやく手を握れるか握れないかの間柄なんだ。6巻では。その距離感の中で、お前の香りの移ったマフラーにくるまれてるってことが、象徴的なんだよ」
「そのマフラーが、私ってことね」
「そういうこと」
「匂いかいでたんだ」
「お、おう」
「竜児のエロ犬」
「うれしそうだな」
「…えへっ」
「マフラーは最後のシーンでも重要な役割をしている。兄貴との私闘に負けて停学くらったお前は、家に引きこもってる」
「私、勝ったわよ」
「そのとき、お前はベッドの上でマフラーにくるまってるんだよ。毛布じゃなくて」
「私、勝ったのに」
「ようするに、そういうことなんだよ。5巻では俺もお前も壁にぶち当たって、なんやかんや自分の無力を思い知らされている。その無力で孤独な自分を黙って包んでくれる対象として、互いを無意識に求め合あってるんだ。その相手の代償がマフラーなんだよ」
「なるほどねぇ。考えもしなかったわ。竜児ってロマンチックね」
「お、おう?そうか?」
「竜児赤くなった!」
「でも、『代償』の使い方おかしくない?」
「面倒だな。心理学用語だ」
「ふーん。で、アニメはどうなのよ?」
「アニメはさすがに尺の問題で心理的な掘り下げが難しいからな。かわりに効果的な演出に使われてる」
「たとえば?」
「後期OPアニメーション、いきなり俺は大河巻きだ」
「そうだっけ?」
「あとでDVD見てみろ」
「まっしろけーなー♪」
「My Silky Love♪な。『オレンジ』のEDアニメーションを見て俺が川嶋を選ばないことを暗示しているっていった奴がいるらしいが、それを言うならOPの大河巻きは俺がお前を選ぶことを明示してるよ」
「…えへっ」
「それから最終話。2話でお前に『竜としてお前の横に居続ける』と言った場所に、俺は一人で立ってお前に「いつかきっと二人はまた出会う」と呼びかける。そのとき大河巻きしてるんだよ」
「つまり、離れていても私は竜児のそばにいるってこと?」
「まぁそうだな」
「そう考えると素敵よね」
「だろ。さて、そろそろ温まったんじゃないか?」
「うん、もうのぼせそう」
「よし、あがるか。って、おい、あわてるな。ほら、拭いてやるからじっとしろ!」
「ねえ竜児!アイス食べよ?」
「だめだ。昼食ったろ。ほらほら、パジャマ着せてやるからじっとしてくれよ」
「アイス食べたーい!」
「だめだ。そんなにアイスばっかり食べて、体壊したらどうするんだ。さっきも言ったけど、お前が病気になったら俺は生きていけないぞ」
「うれしい、そんなに愛してくれてるのね」
「当たり前だ」
「竜児、好きよ!」
「おう、俺もお前が好きだ!」

 
ギシギシアンアン

あとがき

最初に発表したときには、この作品にはでっかい傷がありまして、原作ではまさに6巻が、二人が初めてきちんと手を繋ぐ巻です。ちゃんと原作読んで書けよって話です(汗)

初出 : 2009年5月12日

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