2-Cのわがままちゃん

「ふーん。わがままな奴が増えたのね」

大河がノートパソコンの画面を覗きながらつぶやく。

雨の日の日曜日。竜児の作ったチャーハンをたらふく食べて一眠りした後、やおら起き上がった女王様の娯楽タイム。基本的に食べるかゴロゴロしかして無いくせに、その上高須家では買おうと思っても買えないPCなんかをおもちゃ代わりに持ち込むのだから、竜児としては収まらない。皮肉の一つも言いたくなるのは当たり前である。

「お前にわがままなんていわれるような人生は、さぞつらいだろうな。何見てるんだよ」
「これよ」

大河が指差したサイトにはこんなことが書いてある。以下引用。

「会社のワガママちゃん」チェックリスト

  • 「仕事がうまくいかないのは上司・先輩の指導が悪いからで、自分は十分にがんばっている」と考えている
  • 「この部署の仕事は自分に向いていないから、やる気が起きない。○○課なら必ずうまくやれるのに」と周囲にもらす
  • 業務に対して勇んで前向きな提案をするけれど、内容は稚拙、しかし本人は全くその認識がなく自信にあふれている
  • 自身への適切な指導に対して表面的には聞くふりをするが、決して従おうとせず、強く指導するとふてくされる
  • 「サポートしてもらってあたりまえ」的態度で、感謝の気持ちが薄い

「まったく、親のしつけがなっていないのよ。こんなことで社会を乗り切れるのかしら」
「…………お前。どの口でそんな事いってるんだ」
「何よ」

ぎろりと目を眇めてにらみつける大河に竜児がひるむ。こんなフワフワコットンの格好をしているくせに、嫌になるほど迫力がある。しかし、負けてはならじと竜児もにらみ返す。暴力なら負けるが眼力はそんなに負けてないはずだ。そんなには…コールド負けはしていないはず。

「これ、丸々お前じゃないか」
「なんですって!」

いきり立つ大河を、いいから聞けとなだめる。

「いいか?ちゃんと聞いてろよ。『北村君との仲がうまくいかないのは竜児の働きが悪いからで、自分は十分にがんばっている』と考えている。お前のことだろ」
「な、何よ!本当のことじゃない。この駄犬!」

言葉こそ強い。が、目を白黒させている。どうやら図星と自分でも思っているのだろう。

「『水泳は向いていないから、やる気が起きない。格闘技なら必ずうまくやれるのに』と周囲にもらす。あったなぁ、そんな話」
「むむむ無理があるわね」

無理があるのはお前の強がりの方だ

「計画に対して勇んで前向きな提案をするけれど、内容は稚拙、しかし本人は全くその認識がなく自信にあふれている。おいおい、これほとんど言い換える必要が無いぞ」
「なななななによ!私がいつ稚拙なこと言ったってのよ!」
「いつもだ」

竜児は軽くあしらう。今日は気分がいい。

「自身への適切な指導に対して表面的には聞くふりをするが、決して従おうとせず、強く指導するとふてくされる。すげぇ、一文字も言い換えずにお前のことだ」
「#”$!(&”#$!!!」

大河は、もはや顔を真っ赤にして歯軋りしている。自分の心に作り上げてきた虚像と、本当は分かっているけど目を背けたい自分の実像のギャップに苦しんでいる模様。
「『サポートしてもらってあたりまえ』的態度で、感謝の気持ちが薄い。お前、これも1文字も言い換えなかったぞ。いいか、これで分かるだろうけど、お前はわがまますぎる。なんでもやってもらって当たり前なんて気持ち、通じるのは高校までだぞ。そんなことじゃ社会で通じるわけないんだ。大体お前はだな…」

竜児にも過失はあった。つい、いい気になってノートPCを見ながら説教臭いことを言ったりしたのだ。注意一秒怪我一生。大河が握りこぶしを振り上げたのには、まったく気づかなかった。

初出 : 2009年6月8日

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