コミックス版「氷菓」 第1巻

放送開始と同時に、「氷菓」のコミックス第1巻が発売されました。少年エース連載分ですが、実際には今月発売の6月号掲載分も収録されています。放送開始に合わせてコミックス1巻を出したいという角川の意向でしょう。作者のタスクオーナさんは大変だったでしょうね。

さて、内容ですが文句のつけようもありません。タイアップ企画なのでキャラデザをアニメに握られた状態ではありますが、その上でアニメでは動きと背景の作り込みの印象が強烈であるのに対して、動きのないコミックス版ではむしろ原作通りのしっとり感が出ています。台詞に関しても尺の制限がない分、重要な台詞をきちんと解釈してコマに落としている作品で、こんな作品を読めるなんてファンとしては大感激です。

タスクオーナさんによるコミックスは、描写が細かく遊び心に富んでいるのが特徴で、たとえば「愛無き愛読書事件」における、女子高生のシルエットなど、原作既読者でかつアニメのキャラ設定をチェックした人なら、思わずニヤニヤするでしょうし、同解決編の最後のページの左にある余白ページの一コマなども、イヒヒと笑ってしまいました。

また、コミカルなところはコミカルに、深刻な所は深刻に描かれたメリハリのあるストーリー運びも楽しい部分です。「不毛です」の下りの千反田さんの表情の変化だとか、「お前達なら本を読む以外にどんな風に使う?」という問いに対する各人の返事のイメージも楽しかったですね。摩耶花酷いよ、図書委員なのに。

というわけで、コミックス版「氷菓」第1巻は米澤ファンに安心してお勧めできる一冊となっております。

カバーめくった所のイラスト、あれは米澤作品では不吉だと思いますけどね(苦笑)

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「氷菓」 第1話 伝統ある古典部の再生

ついに、とうとう、やっと始まりました。アニメ「氷菓」。もう、楽しみに待ちすぎて自分の中でも訳が分からなくなってますが、何はともあれ、大好きな作家の看板作品がアニメ化されて電波に乗ったおめでたい週でした。

第1話は登場人物の紹介的なところがあって、割とスロースタートな米澤作品ですから、全体的に地味な印象ではあります。ただ、紹介回だけに登場人物の特徴はよく押さえられた回でした。

原作の雰囲気を意識しつつ、全体的にはアニメ的な表現を優先したな、というのが素直な印象です。以前から言われていたことですが、古典部シリーズは雰囲気が落ち着きすぎていてアニメ化には向いていません。それをアニメにするために、美しい美術と若干の味付けをしたのでしょう。

特徴的な変更の一つは、やはり、原作のうち、込み入った言い回しのやりとりが大胆に省かれていることでしょう。大筋原作通りであることは間違いないのですが、入部エピソードの一番重要な会話の一つである「過失致死も殺人も同じか」という里志とのやりとりが省かれています。積極的に省エネを選んでいる自分は、何となく青春に関心が無くて受動的に灰色な連中とは違うと言う(あるいはそう思いたい)奉太郎を理解する上で、この会話は重要です。エネルギー消費の大きな生き方にも敬意を表していることは他の部分でも語られていますが、省エネを掲げつつ、そのモットーを堅持することに戸惑いを感じる奉太郎。ただ、この部分の会話はあまりにも遠回しで、小説を読んでいても暫くは首をひねるようなところです。削除して正解と言えるでしょう。

キャラクターの改変という意味では、一番大きいのは千反田さんです。原作に比べると随分元気になりました。米澤作品でも屈指の人気を誇るヒロインですし、作品のイメージそのものでもあるので抵抗を感じている人もいるようです。私と言えば、気に入っています。説明は難しいですが、これは私にとって「アニメはアニメでいいじゃないですか」と言える変更です。楚々とした育ちのよいお嬢さんというのは、一歩間違うとくどいキャラになりそうですが、アニメ「氷菓」の千反田さんは、うまく演出されていますね。

立っているときにきちんと体の前で両手をそろえている千反田さんが、疑問を抱いたときに奉太郎に詰め寄る姿など、ニヤニヤしながら感心してしまいました。これはいいアニメ化ですよ。

背景の質感の高さに開いた口がふさがらなかったり、千反田さんが1-Bに来る前後で、掲示板の画鋲が抜かれていたりと、美術の細かさにも圧倒される作品です。前期の「あの夏で待ってる」は、とことん光にこだわった作品でしたが、この作品の美術にも期待です。

ところで原作『氷菓』の副題ですがいつの間にか”You can’t escape”から”The niece of time”に変わっていたんですね。「時の姪」ってのは”The daughter of time”という小説のタイトルをもじったそうですが、姪というのは…いや、それはいずれ。

それにしても、改めて映像で見ても奉太郎は変わり者です。頭が切れるのはいいとして、たかがまっすぐ帰りたいなんてことのために平気で嘘をつきます。彼の場合、嘘や隠し事に仲間を陥れる動機は一切ありませんが、こういう必要悪への躊躇のなさは、探偵役には重要な資質なのかも知れません。

次回は摩耶花の登場と、いよいよ喫茶店「パイナップル・サンド」でのデート回ですね。モットーの堅持か、千反田さんを受け入れるか、保留した奉太郎が揺れる様を楽しみにしてます。

氷菓、まもなく放送開始

今、これを書いているのは日曜日の夜です。来週の日曜日がきて、次の月曜深夜にようやく「氷菓」の放送が始まります。

いやぁ、長かった。米澤穂信を読み始めたのは去年の6月というにわかファンですが、古典部シリーズにどっぷりはまり込んでいたものですから、11月末のアニメ化のニュースにはひどく興奮しました。

ざっと紹介しておきますと、「氷菓」は、米澤穂信のデビュー小説で、この作品から始まる一連の長編「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」「二人の距離の概算」および短編集「遠まわりする雛」は、古典部シリーズと呼ばれ、作者の看板シリーズとなっています。

古典部シリーズの舞台は、飛騨高山市をモデルとしたと思われる架空の街「神山市」にある、県立神山高校です。主人公の折木奉太郎(おれきほうたろう)は、中学時代から省エネをモットーとする「自発的非アクティブ」な少年ですが、海外放浪中の姉から来た逆らえない手紙により、進学早々、部員ゼロの「古典部」に入部することになってしまいます。しかし、そこに居た同学年の少女千反田(ちたんだ)さんによって、省エネであるべき奉太郎の高校生活はやたら波風の富んだ方向に舵を切ってしまいます。

米澤穂信はミステリ作家であり、古典部シリーズはそれぞれが推理小説になっています。自らの器用さを誇示するように作者は作品ごとに推理小説としての形態を変えていますが、一方でこの作者の持ち味は「推理のねたが割れても作品のおもしろさが減らない」、つまり読み物として優れた作品を書くところにあります。

古典部シリーズでは、主人公の奉太郎を初めとする古典部の4人が、それぞれに青春の悩みや不安を抱えています。それらに彼らがどう向き合い、どう乗り越え、あるいはどう挫折するかを、ミステリのトリック記述ばりの繊細な表現で描いているのが古典部シリーズの魅力です。

米澤作品は未読という方も、これは推理作品だからと構えず、彼ら古典部の面々の日々を肩の力を抜いていっしょに楽しんでください。

2012春アニメ

2012年4月も半月過ぎました。今期スタートのアニメも大抵第1話が終わってます。

黄昏少女×アムネジア

原作知らなかったのですが、前期「Another」(の中盤まで)が思いの外良かったので、ホラー枠で視聴しています。もっとも、実は見るのを決めてから原作読みましたが。

話としては、中学校旧校舎に出てくる幽霊「夕子さん」にまつわる学園ホラーなのですが、全体的にコメディ仕立てです。第一回は登場人物紹介って所だと思うのですが…紹介してなかったですね。

這いよれ!ニャル子さん

今期馬鹿アニメ枠。

基本的にはガンダムやらオタクやらのポップカルチャーネタを混ぜるどたばたコメディのようです。ラブクラフトのクトゥルー神話ネタを扱っていることになっているのですが、主人公からして「思い出したようにクトゥルーねた混ぜやがって」なんて言ってます。オタクねた+クトゥルーねたのどたばたアニメとして見ることにします。

生っき物っじゃ、なーい!

坂道のアポロン

「氷菓」と並んで今期一番期待している作品です。

原作は知りません。絵柄が何となく同性愛を思わせる感じがして嫌だったのです。が、始まってみるとそんな事は全然ありませんでした。主人公の対人恐怖症にまつわる機微は今ひとつわかりにくかったですが、戦後昭和中期の軍港という、鉄色の空気の流れる街が、いい雰囲気を作り出しています。かみ合わない日常を突き破るな鮮烈なドラムが印象的な1話でした。

次回が楽しみです。

所で、サブタイトルのMoanin’は、NHK「美の壺」のオープニングで使われていた曲です。

謎の彼女X

今期配信視聴枠。

原作者は「アフタヌーン」誌で活動していた方ですね。今でもそうでしょうか。デビュー作(?)の謎の少年が女の子を振り回す漫画が好きだったのですが、二作目でロリコンを突き抜けてペドフィリアまで行ってしまったのでいつの間にか読まなくなってしまいました。その後アフタヌーンも読まなくなったのですが、5年ほど前、仕事でノイローゼ寸前まで追い詰められた頃、出張先で深夜の本屋でこの番組の原作を読んだことがあります。2巻まで読んでやめたのを覚えています。だって、話しが進まないんだもん。

謎の彼女X、第1話はほぼ原作通りです。夢の中でも踊っていました。狭い空間にごちゃっと色々書き込む作者のスタイルをよくアニメーション化しています。ヒロインが構成的な作品、であるはずなのですがあまりにもありがちな「主人公が知らないこの世の秘密を全部知っている全知な彼/彼女」タイプですね。正直満腹。絵が80年代っぽいのは気にならないな。ヒロインの声優さんが棒読みっぽいのですが、一方で笑い声はすばらしいです。

唾液の擬音は嫌だなぁ。

主人公、特撮映画マニアでしょうか。机前の壁に貼っているのは、「2001年宇宙の旅」っぽいです。反対側の壁には「恐竜百万年」が元ねたらしきポスターがあります。あと、STAR MARSってのは、あれですよね。

いろんな意味で斜め上な作品ですが、これぞ深夜アニメでやるべき作品、であるのは間違いありません。

遠垣内先輩がイケメン過ぎてお腹が痛い

「長くて辛かった壁新聞部での隠れ○○の日々を駆け抜けた俺は、とうとう決勝戦の舞台に立っていた」

そんな台詞が聞こえてきそうですよ遠垣内先輩。カードファイト・バンガード過ぎるでしょうwww。つうか、ヴィジュアルがイケメン・ギタリストで中の人が体育会主将系、やってるのが壁新聞部って、いったいどういう事ですか。俺、放送の時絶対噴くわ。

今回発表されたアニメ『氷菓』の追加キャラデザインでは、遠垣内先輩と沢木口先輩がぶっちぎりで話題をさらってくれました。メインの4人では遊びにくいのでサブキャラで遊ぶことにしたのでしょう。正解です。沢木口先輩はこの姿でも余裕でイメージ通りです。遠垣内先輩の場合、あまり親の言うことを聞きそうにないデザインになりましたが、まぁいいです(笑い)。あ、江波先輩は眼鏡ッ子だとばかり思ってました。

それから、待たれていた入須先輩ですが、おおよそイメージ通りでした。胸が大きすぎる気がしますが、キャラクタ・デザインのボディは、何となくテンプレ貼っただけに見えないこともないので、心配していません。千反田さんと摩耶花もキャラデザは胸が大きすぎるなと思っていましたが、他の絵ではそれほどでもないです。それから、入須先輩の髪。思いっきりロングにしましたね。奉太郎が「警察官とか自衛官、それも尉官クラス」などと言うからショートカットを想像していましたが、『遠まわりする雛』では髪をアップにする描写があったりして意見の分かれるところでした。

人の雰囲気は所作で決まるので、京都アニメーションが諸先輩方をどう動かすのか興味のあるところです。

最終回

3月ももう終わりです。いろいろな番組が最終回を迎えました。

ブログでは触れませんでしたが、『ちはやふる』楽しかったなぁ。

あの夏で待ってる

予想通りと言えば予想通りの終わり方ではありました。結局先輩の記憶の場所にはたどり着いたものの、二人は再会を誓いつつ結局離ればなれに。

イチカに被らせたシールドが、実はウエディング・ベールを暗示していたりして、細かいところで憎いです。

檸檬が撮りためていたフィルムを4人に渡すのは、想像通りでした。ただ、このフィルムを渡す前後の、日常に戻った4人の描写がよかったですね。あれほどさわやかに映画に誘ったくせに、煮え切らない哲朗もいいですが、その煮え切らない態度を前にして全く動じず、「ウェルカムですよ」と待つ女をにっこりアピールする美桜。そして、互いの気持ちをさらけ出してなお、仲のいい幼なじみであり続ける柑菜と哲朗。

少し無口になった海人。もともとアクティブな少年ではなかった彼が、さらに静かに勉強に打ち込んでいる様は、「必ず会いに行く」とイチカに誓った約束のためでしょうか。

4人でのフィルムの上映会。それぞれにけりを付けたつもりの気持ちはまだやはりくすぶっていて、楽しい想い出やつらい想い出に揺れるそれぞれが丁寧に描けていました。そして柑菜を気遣う美桜、海人を気遣う哲朗。単なる恋愛劇ではなく、それを支える互いの気遣いがこの作品に色を添えています。

後半、あまりの破天荒さが不気味にすらなっていた檸檬や、さんざん石塚家で人の口に上りながら、最後に一度だけ登場する真奈美の旦那さんといった面々が爆笑を呼びましたが、その彼らはどうやらエンディング後の自主映画上映会に繋がっているようです。何しろ海人に渡されたフィルムは「山乃檸檬 presents. 未完成版」ですから。

夕刻や朝の色が印象に残る、さわやかでいい番組でした。

Another

わーい!死者の予想当たったよ!

と、単純には喜べなかったなぁ。序盤から中盤に描けて、恐怖から謎へと軸足を移したこの作品は、最後の二回でサバイバルが話の主体になります。

薄っぺらだったな。

前回も批判しましたが、水嶋監督は人の生死を描かない方がいいです。多分、そっち方面の才能と努力が決定的に欠けています。序盤から中盤にかけて、あれほど赤沢さんの委員長としての責任感や、恒一への好奇心・想いを描いておきながら、最後の二回で全く活かすことができないなんぞ、噴飯ものです。

恒一が死者と向き合うシーンも、あんな一方的な迷いだけではなく、二人の間の会話があってしかるべきなのに、なんだかなぁといった感じでした。

序盤がすばらしかっただけに随分がっかり感の残った番組でした。