虎よ!虎よ!

「ねぇ、竜児。外野がうるさいんだけど」
「おま…うるさいとか言うなって言ってるだろう」
「うるさいのはうるさいのよ。私が前だろうがあんたが前だろうがどうでもいいじゃない」
「確かに俺もどっちでもいいと思うけどな」
「前とか後ろとかキャンキャンキャンキャン犬の交尾じゃあるまいし。あ、そうかそれで竜児が後ろか」
「お前今すごく失礼なこと考えたろう。てか、仮にも女なんだからシモネタはやめろ」
「いいから竜児は手を動かすの!」
「おうおう、お二人さん。前と後ろは重要だぜ特にバッテンが絡むときにはなぁ。てか、高須君、公衆の面前で彼女の髪を梳くのはやめてくれないか」
「みのりーん!あのね、竜児が前とか後ろとかエロいの」
「お前だよ、それ言ったの。櫛枝、久しぶり。元気か?」
「何よ、すこしくらいフォ、フィ、フィアンセに花を持たせてくれてもいいじゃない」
「黙ってりゃきれいな花を自分で落として踏みにじってるのは誰だよ」
「なんですっ痛い!」
「当たり前だ、人に髪あずけたまま振り向く奴が居るか」
「いやぁ、大河と高須君のアベックはいつ見ても飽きないね。ちなみに私は大変元気だ」
「みのりんアベックって古いよ」
「おい櫛枝、鼻血でてるぞ」
「失礼失礼、お二人に当てられたようだ」

◇ ◇ ◇ ◇

「何、高須君学校でまでタイガーの世話焼いてるの?甘やかしすぎじゃない?
「おう、川嶋か。だんだん収拾が付かなくなってきたな」
「はぁ?人の顔見ていきなり収拾が付かないって何?信じられないんですけど」
「悪ぃ。そう言う意味じゃねぇんだ」
「ばかちーはもともと収拾が付かない女だから仕方ないよ」
「タイガー言うじゃん。身動きとれそうにないくせに」
「ちょ、やめぎゃはははは!助けて竜児!」
「川嶋、くすぐるのはやめてやってくれ。ほら大河、暴れるな」
「仕方ないわね。クソちびトラは気にくわないけど、いくら亜美ちゃんでも高須君にそんな風に見つめられちゃ引き下がるしかないね」
「ば、馬鹿野郎。俺は別に色目なんか使ってねぇぞ」
「何々?顔赤くしちゃって。まんざらでもないってか?タイガーも気をつけた方がいいよ。高須君この目で1年の女子の間で噂になってるから」
「ほほう、高須君がそんなにモテキャラだったとは。大河に寂しい思いさせちゃだめだぜ」
「竜児、期待しちゃ駄目よ」
「わかってるよ、どうせ前科三犯とか言われてるんだろ」
「ざんね~ん。そうじゃなくってぇ、下駄箱の所で朝一に高須君を見て卒倒した1年女子がこれまでで4人いるんだって」
「ぶほっ」
「ぷくくく」
「もう、そのくらいじゃ驚かねぇよ」
「ちぇ、亜美ちゃんつまんなーい。とにかく、そう言うわけで高須君は1年男子に大人気。朝から張り込みされてるの知ってた?」
「はぁ?てか、最近妙に見られているというか変にまわりに男が多いとは思ってたけど」
「高須君は男の子にモテルのかい!」
「竜児。浮気は同性も含めて許さないわよ」
「誰がするか。てか何で女子が気絶して男子が俺に注目するんだよ」
「だ・か・ら、高須君の横に居ると、高い確率で女子が気絶するの。そうしたらさっと手を出して抱え上げようって作戦よ。名付けてラッキー・ナイト作戦。ちなみに高須君の近所はヤンキー・フィールドって言われてるらしいよ。男ってほんと、お・ば・か」
「漁船のまわりに鳥がたくさん飛ぶってあれね。何てことかしら、私を差し置いて竜児でそんな楽しい遊びをするなんて」
「おい、コメントの方向が少し違うだろう」
「む、ちょっとあーみんや、質問があるんだけど」
「なに、実乃梨ちゃん」
「ヤンキー・フィールドで待ち伏せしている男子の所に想い人を連れてくるサービスって、需要あるかな」
「櫛枝、俺をネタにバイトをするのはやめてくれないか」
「ははは、やっぱりだめか。仕方ないから話を戻しますか」

◇ ◇ ◇ ◇

「何の話してたの?」
「川嶋が来る前はスレタイの話をしてたんだよ『大河x竜児』か『竜児x大河』か」
「あんたが来てからほんとに収拾付かなくなったわね」
「はぁ?クソちびもう一回思い知らせないとわからないってか?」
「ちょ、やめ、ぎゃははは竜児!りゅ、りゅあははは」
「だからやめろって」
「あんた達のどっちが前とかどうでもいいじゃん」
「いやいやあーみん先生、そうはいかないぜ。これは重要な問題だ」
「いや、まじでどうでもいいだろ」
「竜児は黙ってて。みのりん、どうして重要なの?」
「どっちが攻めでどっちが受けか変わるからだよ」
「なんだそりゃ」
「喧嘩するときは私が蹴っ飛ばしてるわよ」
「大河や、そう言う話じゃないんじゃよ。あと、婚約者を蹴っ飛ばしちゃ駄目だ」
「だって」
「実乃梨ちゃ~ん、はっきり言っちゃいなよ。蹴っ飛ばすくらい嫌いなら高須君もらっちゃうぞって」
「あ、あーみん!」
「赤くなった赤くなった!」
「おい、川嶋!たちの悪いこと言うな」
「高須君も赤鬼になった!」
「ばかちー、これ照れてるの。お願いだから顔のことをいじるのはこのくらいにしてあげて。竜児、私、あんたの顔じゃなくて心が好きだから。ね。元気出して」
「フォローになってねぇよ」
「う、お二人さんに当てられてまた鼻血が。とにかく!大河は高須君を蹴らない!あーみんは変なこと言わない!高須君は節分にうちに来て!」
「なにげにひでーぞ」
「大河とあーみんもおいで。一緒に豆撒こう」
「ぎゃはははは!私行く!」
「じゃぁ亜美ちゃん甘えちゃおうかな。知り合いの雑誌の編集さんがモデルガンのマニアで連射できる銃を持ってるって言ってたし借りっかな」
「お前らなぁ」

◇ ◇ ◇ ◇

「話しがそれてばっかりだが前と後ろの話をしようか」
「犬がハアハアする話だから、竜児が後ろでいいのに」
「だからシモネタはやめろ」
「君たち仲がいいのは結構だが少し黙っててくれないか。いいかね、A×Bと書いたときにはAが攻めでBが受けだ。ナイフXフォークの場合はナイフが攻めでフォークが受けだな」
「わかんない」
「全くついて行けねぇ」
「ちょっとあーみん、どこに行くんだね」
「いや、用があるから帰ろうかなって。実乃梨ちゃん、手を放して」
「怪しいなぁ。嘘くさいな。ゲロ以下のにおいがぷんぷんするぜ」
「はぁ?亜美ちゃんちゃんとお風呂入ってるし。いいにおいのコロン付けてるし。てか腐ってるにおいがするのはお前だろ、お前」
「みのりん、ばかちーはゲロのにおいはしないよ。犬臭いけど」
「ちびトラは黙ってろ!」
「お前らなぁ」
「おお!高須に逢坂。櫛枝に亜美もいるじゃないか。楽しそうだな。俺も混ぜてくれ」
「北村君!」
「北村…だめだ。もう絶対収拾つかねぇ」
「祐作!後お願い、その腐った女はあんたに任せる」
「あちゃー、逃げられちまったぜ。じゃぁ、北村君。逃げたあーみんに替わって君が腐海に沈みたまえ」
「なんだ?アニメの話か?」
「近いけど…多分違うぞ北村」
「スレタイは『大河x竜児』か『竜児x大河』かって話してるの」
「ほとんどしてねぇけどな」
「大河がどっちでもいいなんていうから、攻めと受けはそんなに甘くないって行ってるんだよ。具体的には×の左が責め、右が受け。左右の交換はきかない」
「なるほど、わかったぞ櫛枝。行列だな」
「へ?」
「は?」
「行列の積は非可換だ。A,BがいずれもNxN行列の時、A×B≠B×Aだ。そうだな、高須」
「おう。だな。だけど櫛枝が言っていることは違うと思うぞ」
「違うのか?」
「うーむ。さすが北村君。何を言っているかさっぱりだが、それは多分数学だろう。攻めと受けを数学の世界まで高めるとは。とにかく、今は数学の話じゃない。大河と高須君のどっちが責めでどっちが受けかって話だ」
「もうやめようぜ」
「うむ。行列ではないのか。櫛枝、攻めとか受けとかって何だ?」
「それを真っ昼間の学校の教室で私に言わせようっていうのかい、北村君や。わかったよ。君は攻めだ。あと、私は攻めだと思ってたけど、どうやら胸の鼓動は受けだと言ってるようだ」
「高須、お前はわかるのか?」
「最初は何を言っているのかさっぱりだったが、櫛枝の顔つき見てるとだんだん見当がついてきた。これはろくでもない話だ」

◇ ◇ ◇ ◇

「さて解説だ。責め、受けとは要するにどっちが積極的かって事だよ」
「そうか。積極性なら逢坂かな。高須もだいぶ積極的になったが、去年までは正直おとなしかったぞ」
「まぁ、否定はしねぇよ」
「喧嘩なら竜児に負けないわよ」
「違います。責め、受け、とは夜の用語です」
「はぁ?夜?」
「君たちの夜の生活はどっちがリードするかって話だ」
「お前、昼間っからそんな話するなよ」
「みのりん、鼻血」
「櫛枝。友達をダシににしてそんな話を楽しむのは感心しないぞ」
「でも話を振ったのはお二人さんだぜ」
「俺たちはスレタイの話ししかしてねぇ」
「だからスレタイの話しがそう言う話しなんだってば」
「……そうだったのか」
「櫛枝、いいのか?この板はガチエロ禁止のはずだぞ」
「北村、お前どこからそんな言葉」
「北村君、相変わらずボキャブラリが豊富で素敵」
「このくらいはいいだべさ。てか、お二人さんは実際どうなのさ」
「なんだよ、お前。俺はまだ大河には指一本触れてねぇ」
「う・そ・つ・き」
「怖ぇよ。やめろよ」
「高須君はさっき大河の髪に触ってたじゃないか!」
「あれは梳いてたんだ!」
「ほほう、髪を梳くのは指一本触れてないことに入ると。じゃぁ、ちゅっちゅはどうなんだい?昼間っから教室で婚約者の髪を梳くような男子である高須君は大河にちゅっちゅしたのかい?」
「なんで俺がそんな質問に答えなきゃいけねぇんだよ。とにかく!俺は大河が後ろ指を指されるような事は何一つしてねぇ!大河を傷つけるようなこともしねえ!」
「櫛枝、もうそのくらいにしておけ。逢坂がフリーズしている」
「そうかい。もうちょっとで興奮した高須君が大事なことを口走りそうなんだが、まぁいいか。今の台詞も結構キュンと来たぜ」
「なんだよ、それ」
「ドアの向こうで聞いてるあーみんもきっとドキがムネムネだぜ」
「聞いてねぇし!」
「てか川嶋、お前そこに居たのか」
「ま、それはおいといて、夜の生活がだめなら仕方ない。昼の生活で手を打つぜ。二人はおデートの時にはどっちがリードしてるんだい?」
「それは…竜児…かな?」
「ふむ。やっぱりそうか」
「やっぱりって何だよ」
「いやいや高須。想像通りだ。立派だぞ。デートでは男子が女子をリードすべきだ。逢坂も存分に高須に甘えるといい」
「もうやめろよ」
「そう言うわけでお二人さんは『竜児×大河』で決まりだな」
「そうだな、うむ、これですっきりした。目出度いぞ」
「ねぇ、竜児。スレタイどうなるんだろう」
「知らねぇ。変わらないんじゃないか?」

(おしまい)

あとがき

『【とらドラ!】大河×竜児【キュンキュン妄想】 Vol27』スレが立った時に、大河×竜児か、竜児×大河かで、ワイワイ盛り上がっていた時に書いた作品です。タイトルは思いつきで名作SFからとりました。

初出 : 2011年12月30日

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください