蹴っ飛ばしてやろうか

ばかちーに言わせると、私達はモラトリアムを生きているのだそうだ。

◇ ◇ ◇ ◇

夏は嫌い。日差しが強くてすぐに日焼けするし、日焼けしないように長袖を着ると汗だくになる。お気に入りのロングのワンピースも暑くて仕方が無い。外国には夏でも涼しい国があるんだって。何それ。不公平よね。

「待った?遅れてごめん」
「なんで謝るのよ。待ち合わせまであと3分あるじゃない」
「はぁ?悪くなくても遅く来たほうが謝るのよ。社会人のじょ・う・し・き」

ちょっとお高くとまった表情を作ってそう言うと、ばかちーは注文をとりにきたウェイトレスにアイスレモンティーを注文した。

「まだダイエットしてるの?」
「まだしてるのよ。つーか一生。カロリー制限は亜美ちゃんの天使の笑顔が世界中の男どもに夢と希望を振りまくために必要な自己犠牲なのよ」
「ふーん」

ばかちーは面白い。悪口とくるくる変わる表情でいつも自分の本心を隠すことができる。苦しくてもつらい顔をしないし、悲しくても悲しい顔をしない。優しくてもやさしい顔をしない。それでも竜児は「あいつは変わった。肩の力が抜けた」と言ってる。私も、そう思う。

「あんたのそれナニ?」
「クリーム・ソーダ」

ばかちーが関心を持ってくれたのが嬉しくて、つい笑顔になる。いつもはこんな色の飲み物を見ると、とても嫌そうな顔をする。

「よくまぁそんなもの飲んで太らないね。うらやましいよ」
「私は全然食べなくても背が高いばかちーのほうがうらやましいよ」
「ま、そりゃそうか。ウェストは努力して維持しているけど、背の高さは努力じゃないもんね」

そういうと、ウェイトレスが持ってきたアイスティーにちょっとだけ口をつける。

「にしても、体に悪いんじゃね?そんな色のもの飲んであと60年どうやって生きてくつもりよ」

そんな色のものを売っているお店で、よくこんなこと言えると思うと、おかしくなった。

「大丈夫よ。みんな飲んでいるんだから。それより素敵な色だと思わない?私こんな色の瞳だったら良かったな」

うーん、とばかちーは私の顔を覗き込む。

「あんた顔立ちは整っているけど外人風ってわけじゃないからね。碧眼ってつらじゃないし、ブラウンの瞳が一番だと思う。こういうパステルカラーだと強すぎるんだよね」
「そうなのかな。ま、ばかちーがそう言うならそうなのか」

お化粧だとか顔やおしゃれの話になると、ばかちーは私よりずっと先を行っている。

「で、高須君とは最近どうなの?うまく行ってる?」

◇ ◇ ◇ ◇

ばかちーの携帯にメールを入れたのは4日前。「元気?」って入れたら忙しいけど時間が取れるから会おうって返事が来た。私は元気?って聞いただけなんだけど。みんなと旅行に行った後ばかちーとはしばらく会っていないことだし、スドバでおしゃべりでもしようってことになった。

「うまく行ってるよ。夏休みはずっと図書館で勉強してる」
「二人で?」
「そ。午前中は受験勉強。午後は竜児が進路の勉強して私は本を読んでる」
「デートとかしないの?」
「図書館でも二人でいられるし」
「えー?信じられんねぇ」

と、ばかちーはせっかくのきれいな顔をゆがめて首をかしげる。

「タイガーちょっと物分りが良すぎるんじゃね?たまにはワガママ言って高須君に遊園地でも連れてってもらいなって。甘い顔すると男ってつけあがるよ」
「そうかもね」

と、私は言葉を濁してばかちーに笑った。そりゃ遊園地に竜児といけばとても楽しいだろうけど、図書館で竜児と一緒にいるだけで私は十分。なんて言うと、きっとばかちーは怒る。怒ったふりをするのか、本当に怒るのか、面白がって怒るのか、ためしに言ってみたい気もするけど。

「そんで、高須君進路の勉強って、もう進路決めたんだ」
「んーん。まだ。決めるために勉強してる」
「何それ」
「どんな分野の仕事があるのか、いろんな本を読んで調べてるよ」
「えー?本なんかでわかるの?」
「わかるんじゃない?ものすごくたくさん読んでるよ。今週は原子力の本を読んでた」
「はぁ?原子力?似っ合わねー!」
「そうだよね」

けたけた笑うばかちーにつられて私も笑う。竜児が原子力。想像できない。想像できないけど、竜児は今週山のように原子力発電の本を読んでいた。家に帰ってもずいぶん読んでいると思う。暑いのに。竜児の勉強部屋、クーラー無いんだよ。

竜児がいろいろな仕事の本を読んでいるのは、はじめは本当に進路を探そうとしているのだと思っていた。でも、そのうち気がついた。竜児は私と一緒に生きるために一番よさそうな仕事をしている。だって、あの仕事は安定している、とか、この仕事は労働時間が短いとかばっかり私に説明するんだもん。

いくら私でも気付くわよ。『将来にわたって安定して、家族と過ごす時間が長い仕事』を、竜児は探している。変よね。笑っちゃう。だって、仕事なんて本当に好きなことを選ぶものだって、みんな言うじゃない。竜児はちょっと頑張りすぎ。何よ、私のためって。まるで子ども扱いじゃない。そのうちとっちめてやらなくちゃ。

でも、この夏休みに竜児をずっと見ていて新しいことに気付いた。竜児はああやって図書館で何かを調べるのがすごく楽しいみたい。それと、調べたことをいろいろ話してくれるのも上手みたい。図書館からの帰りに、その日調べたことを教えてくれるんだけど、すごくわかりやすい。ま、わかるのは最初の日だけで、竜児がどんどん進んでいくと、私には話がわからなくなるんだけど。でもいいじゃない。竜児の話を聞くのは、なに言ってるかわかんなくても楽しい。わかんない、っていうと、一所懸命話し方を考えて教えてくれるし、すごく楽しそうな顔をしている。竜児のそう言う顔を見るのが楽しい。

運動部の子の彼女って、こんな気持ちなのかも。

「てことは、高須君は進路決めてないのか。でも、大学は行くんでしょ」
「どうだろう。決めては無いみたい。願書を出すまでに決めるって言ってた」
「行けばいいじゃん。高須君に『行きな』って言ってやんなよ。あんたも高須君も大学に行けばいいじゃん」
「でも…」

すぐ結婚するなら、高校でてから働かなきゃいけないじゃない。とは、言えなかった。だって、あんまりプライベートなことだし。ばかちーは、私達がバレンタインデーに逃げたときにかくまってくれたから、いざとなったら逃げ出す覚悟まであったことは知ってる。でも、私がすぐにでも一緒に住みたいのをどれだけ我慢しているかまでは、多分知らない。こうやって別々の家庭に暮らしていると、また引き離されそうで恐ろしくなる。竜児は私達は逃げちゃダメなんだって言った。私もそう思う。竜児は私達の将来はみんなに祝福してほしいと言った。私もそう思う。だから私なりに頑張っているつもり。

でも。

「行っちゃいなって。大学。せっかくのモラトリアムなんだからさ」

モラトリアム。

「それなんだっけ」

何かで聞いたんだけど、ぱっと思い出せなかった。大学生のことだったっけ。

「誰もあんた達に期待していないって事」

何よそれ、最近喧嘩してないからって、私がどれだけ怒りっぽいか忘れてない?ちょっと気分を悪くした私をほったらかしで、ばかちーは窓の外を見ながら話している。

「今すぐ働かなくてもいいって事。社会がそれを許してくれるって事」

そういってこちらに向き直ると、私を見ながらちゅーっとアイスレモンティーを飲む。一口飲んで、黙って聞いている私に話を続ける。

「日本の社会はそうなってるのよ。子供は大学を出るまで親のすねをかじっても怒られない。高須君のお母さんも実家と仲直りしたから、前ほどお金に困ってないんでしょ?じゃぁ、大学行けばいいじゃない。あんたもだよ。頭いいんだから奨学金でももらって大学行きなよ。で、二人でラブラブ・キャンパス・ライフを満喫すればいいじゃん」

ばかちーの言いたいことは分かる。ばかちーは私の言いたいことも分かってるはず。

ほんとに大学にいったら、結婚はずっと後になるかもしれない。

◇ ◇ ◇ ◇

ママは私に負い目を感じてる。

いっしょに住み始めてからそれがわかった。最初は竜児から引き離されるのが怖くて何も見えなかったけど、引き離されても絶対竜児と一緒になってやると決めたら、少しずついろいろなことが見えるようになった。

反動なんだろうね。ずっと私をほったらかしにして、パパの手元に置いてたせいで、私がひどいことになってしまったって思ってる。普通そう思うよね。おまけに私、こんなだし。

竜児も知らなくて、ママが…ママと新しいパパが…知ってる私の秘密がある。

私は今でも夜中に大声で叫んで起きることがある。寝ている間に夢の中で泣くことがある。竜児の名前を叫んで起きることがある。ばかみたい。独りで住んでいたマンションでも、新しい家族と住んでいるマンションでも、私はびくびくしながら寝ている。そのくせ、竜児とやっちゃんのボロアパートでは一度もそんなことは無かった。なにこれ。分かりやす過ぎない?

ママは私がこんな風になったのは、自分にも責任があるって感じてるみたい。そりゃそうよね。子供を育てるのは親の責任だもの。私はそのおかげで竜児と出会えたけど、それとこれとは別。とにかく、ママは責任を感じてるらしくて、今度はちゃんとしようとしているみたい。

それで困ったことになった。

多分、ママは私と竜児が結婚するのをすぐには許してはくれない。竜児は働いていないから。未だ私を養えないから。それに竜児のことをあまりよく思ってないみたい。だって、自分の娘を二回も連れて逃げてんだもん。いくら私が自分の意志で逃げたっていっても、親は相手のせいにしたいわよね。おまけに自分が私をほったらかしている間に竜児が私の世話をしてくれたってのが気に入らないんじゃないかと思う。誰だって自分の娘を連れて逃げるような男相手に借りは作りたくないわよ。

多分ママは、本当は竜児を嫌ってない。単にへそを曲げてるだけ。

でも、すぐには結婚を認めてくれないような気がする。私が竜児をまだママにきちんと紹介できてないのはそのせい。8月ごろには何とかしたいって竜児には言ったけど、ちょっと難しそう。

本当はもっと早く竜児を紹介して、もっと早く友達を紹介したかったのに。なんて愚図。自分でも嫌になっちゃう。

◇ ◇ ◇ ◇

ママと新しいパパが竜児との結婚を許してくれなかったらどうなるんだろう。考えると恐ろしくなる。

『大河、すまねぇ。未成年の結婚には、親の承諾が必要だった』

って4月に竜児に聞かされたときには、何それって思わず竜児をつねっちゃった。だって18歳になったら結婚しようって言ってくれたのに。だからOKしたのに。もう返品不可で私をお届けしちゃったわよ。どうしてくれるのよ。

私の心は竜児に渡してしまった。返品は不可。返品されても新しいお届け先なんか無い。子犬といっしょ。最後まで面倒見てもらわないと、私はもうだめ。いまさら捨てられても、寂しくて死んじゃう。

あれ、犬じゃなかったっけ。

◇ ◇ ◇ ◇

「ねぇばかちー、寂しくて死んじゃうのって子犬だっけ」
「はぁ?あんた何いってんの?私の話聞いてなかったわけ?」
「ごめんごめん、ファンデの話だよね。子犬にファンデ塗ったら死んじゃうかな」
「知らねっつーの。てか、無理やり話し合わせんなよ。寂しくて死ぬのはウサギだろ、ウ・サ・ギ。てか、あんたなんなの。そんなニコニコして、寂しいとか死ぬとか。本当に高須君とうまくいってんの?お母さんとちゃんとやってんの?」

ばかちーは色の濃いサングラスを下にずらして私の顔をじっと見た。

「うまくいってるよ。前よりずっとうまくいってる。でも、思ったほど早く結婚できないかも」

融けたクリームとソーダが混ざって、エメラルドみたいなきれいな色は濁ってしまった。時間が経ってしまったから。まだ甘いのにね。

「ま、あんなことがあったからあんた達が早く結婚したいってのはわかるけどね」

ばかちーのアイスティーは氷が融けても色は変わらない。きれいなブラウンのまま。

「あんたたちさ、もうあせる事無いんじゃない?もう誰もあんた達を引き離そうとはしてないんでしょ。それに高須君、3月ごろっていつまでも待つみたいなこと言ってたよ。再会できて舞い上がってるのはわかるけどさ、そろそろ落ち着きなよ」

そう言って、またちょっとだけアイスティーを飲む。

氷は透明なんだよね。

◇ ◇ ◇ ◇

ばかちーに言わせると、私達はモラトリアムを生きているのだそうだ。

誰も私と竜児に今働けなんて言わない。誰も私と竜児に別れろなんて言わない。

「私はとっくにモラトリアムなんて終わったけどねぇ。亜美ちゃんが働かないと全国のかわいそうなファンが寂しくて死んじゃうし」

ばかちーは、みのりんのモラトリアムも終わっていると言う。みのりんには誰にも言わない秘密があって、多分その秘密のために一所懸命バイトをしているんじゃないかってばかちーは言ってる。狩野すみれのモラトリアムも終わってるって言われた。

社会は大学を出るまで待ってくれるけど、中には「もう結構です」って言って、自分で歩きはじめる子がいる。目標を決めるというのはそういうことだって、ばかちーは言う。

「私と竜児にだって目標はあるわよ」
「何よ」
「それは…」

言いにくい。

「入籍して、はい目標達成ですってか?お手軽な目標でうらやましゅうござんすね。で、あんたと入籍するのに高須君はどうするわけ?大学棒に振って就職するの?あんな頭いいのに。ちゃんとした大学はいってちゃんと勉強すれば、それなりの収入とステータスも手に入るのに、あんたと結婚するために高卒で安い給料で働くっつーの?」

ばかちー、そんなこと言わないでよ。私、あんたに言い返せないじゃない。だって、あんたのほうが正しく聞こえる。

「けっ、ばっかじゃねーの?どんだけお姫様気取りよ。誰もあんた達に別れろなんて言わないのに、あんたは高須君を一日でも早く独り占めしたいばっかりに、安い給料の仕事に就かせるんだ。高須君はあんなだから文句は言わないよね。てか、おめでたすぎて文句も思いつかないってか。ま・じ・ば・か・じゃ・ねーのあんた達。二人なら貧乏でも耐えられますって?どこのホームドラマよ。もう21世紀だっつーの」

言いたいことを言って、ばかちーはアイスティーを飲み干す。いつもは半分くらい残すのに。

「あーあ、気分悪ッ。私もう帰る」

そう言って伝票をつかむと、ばかちーは立ち上がった。

「ばかちー、ごめん」

あわてて謝る。立ち上がったまま、ばかちーは「ちっ」と舌うち。

「なんで私に謝んのよ」
「ごめん。竜児に謝ったほうがいいかな」
「だから何であんたが謝るのよ」

ばかちーは唇をかんで外をにらみつけてた。

「あんたたちのことだからさ、私が首突っ込むスジなんかじゃないんだけど」

そこまで言って少し黙った後、ばかちーは急に笑顔にもどった。

「あ~あ、せっかくのオフが台無し。亜美ちゃん気分悪~い。ね、タイガー。お店でて歩こうよ。気分転換しよっ!」
「うん、いいよ」

ばかちーと付き合うには、我慢強さが大切だと思う。わたし、少し我慢強くなったよね。

◇ ◇ ◇ ◇

「あっちー。なに、これどうなっての。ねぇ。暑すぎくね?いくら夏だからってありえなくね?神様、私が何か悪いことしました?これは罰?ひょっとして美し過ぎるから?きれいな亜美ちゃんは存在自体が罪ですってか?」
「ばかちーはいっぱい悪いことしてると思うよ」
「何よそれ何よ。私がいつ悪いことしたっていうのよ」
「いつも悪口いってる」
「亜美ちゃんは悪口なんか言いませ~ん。自分に正直なの。てか、正直者が損をする世の中なのか。あ、つながった。だから暑いんだ」
自分で外に出ようと言ったくせに、ばかちーはすぐに暑い暑いと言い出した。ばかちーにばちが当たって私まで暑いって、なによそれ。
「そうだ、タイガー私の部屋来なよ」
「部屋?」
「そ。さっき話した奈々子と麻耶に頼まれてた限定版のファンデがあるんだ。ちょっとあんたで試させてよ」
「それ、実験台じゃない」
「いいじゃんいいじゃん、あんたみたいな肌の子ってモデル仲間にもいないし。文化祭のときは最後他人任せだったから不完全燃焼だったんだよね。あ、そうだ。きっちりメークしてやるからさ、後で図書館に行って高須君びっくりさせてやんなよ」

すっかり機嫌を良くしたばかちーは、楽しそうにひとりでしゃべっている。

ばかちーに言わせると、私達はモラトリアムを生きているのだそうだ。

ばかちーも、みのりんも、狩野すみれも、自分達の道を決めて歩き出したから、もう止まることはできない。でも、私達は何かを決めるのを、あと4年待ってもらえる。だからばかちーは、私達はあと4年、のんびり楽しめばいいと言ってる。

竜児とあと4年、結婚せずに。

そうすれば、竜児は今就職するよりいい仕事に就ける。そして私達は、多分誰にも反対されずに結婚できる。それはきっと竜児にも私にもいいことなんだろう。でも、私は待てるんだろうか。時折心の中に浮かび上がる、やり場のない激しい気持ちをあと4年も持て余したまま待つことができるんだろうか。一度は、何年かけてでも竜児のもとに戻ってくるつもりでママの所に戻った。でも、竜児と再び会うことを許された今、私はそれほど我慢できない気がする。

竜児と一緒になりたい。

いつまでも二人別々なんて我慢できない。私の体を引き裂いて、竜児の体を引き裂いて、無理やりひとつにしてしまいたい。私の心臓を、竜児の体に埋め込んで、私がどれほど竜児を愛しているか、竜児に教えてあげたい。

「だからさ、絶対あんたから高須君に『お化粧どう?』なんて聞くんじゃないよ。あんたはじっと高須君を見るだけ。正面から、頬杖ついて見るだけなんだからね。ポイントは高須君が気付いたら目をそらすこと。ちょっと微笑むのを忘れちゃダメよ。これ1時間やられて正気な男なんていないんだから。あーわくわくする。私もついてって陰で見てようかな」
「ねぇ、ばかちー。竜児がぜんぜん気付かなかったらどうしよう」
「そんときは」

と、ばかちーは真顔になって

「蹴っ飛ばしてやんな」

だって。

竜児は私のことを本当に愛してくれていると思う。でも、私の気持ちをわかってくれているんだろうか。私がどれほど竜児を愛しているのか、わかってるんだろうか。

蹴っ飛ばしてやろうかな。

(おしまい)

 あとがき

大河の独白で書いてみました。「とらドラ!」は竜児の物語なので、竜児の心情は良く描かれています。後半、大河の心情描写も挟まれるようになりますが、それほど多くありません。

10巻冒頭、逃げながらほんの少し明かされる大河の激しい気持ちが好きです。

この作品では亜美にいい役回りを与えています。口は悪いですが、原作ではずっと大河の事を見守っていましたね。彼女の言う「モラトリアム」は原作でも恋愛に対するそれぞれの姿勢のキーだと思っているのですが、それはともかくとしてこの作品では焦る大河に向かって「落ち着け」と言わせています。続くSundays, Octoberではこの「落ち着け」が主題になっています。

初出 : 2009年4月18日

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