自分で書いた文章を読み返しましたが、言いたいことの半分も言えていません。
なんというか、この物語の魅力は、やはり青春なんですよ。14歳。中学二年生。収入に何の責任もなく、大学受験まではまだ遠く、急激に大人になる自分を意識ながら、でも目の前の異性に対してときめいている自分に戸惑う。そういう時期をみずみずしく描けているからこそ、この物語の悲しさが際立ってきます。
願ったことがささやかであればあるほど、悲劇の色が濃くなるのです。
突然目の前に現れた不思議な少女は、ひょっとしたら自分のことを好きかもしれない。そんな予感に浮き足立つ少年。自分以外に彼の良さがわかる女が現れるなど、想像もできなかった少女。そういった日常の出来事を夏の終わりの空の下に鮮やかに描き出したからこそ、この本はいつまでも心に残る本になったのでしょう。