「うん、私だけど」
「ちーちゃん?同じ部よ」
「そうね。あの大きな家の子。すっごくちゃんと躾けられたって感じ。でも全然お高くとまった感じがしないの。私達にもものすごく丁寧だし」
「ううん。ぜんぜん余所余所しくないって。むしろ逆。どうしてこんなに仲良くしてくれるの?って感じ。人の悪口だって言ってるの聞いたことないし」
「そうねぇ。勉強だってできるし、身の回りはきちんとしているし。趣味とかはわからないけど。別に欠点がないってわけじゃないわよ」
「たとえば…ちょっと、そんな事聞いてどうするの?ちーちゃんに変なことする気じゃないでしょうね」
「関係あるわよ。友達なんだから。まぁ、あんただって折木よりはましだと思うけど」
「だからそんな事聞いてどうするのよ。あ、こらっ、待ちなさいよ!」
◇ ◇ ◇ ◇
「そうだよ。僕が福部だけど」
「千反田さん?ああ、同じ部だよ」
「あはは。摩耶花に聞いてるよ。『ちーちゃんのこと、嗅ぎまわってる男がまた居る』ってね。心配は無用だよ。僕は追い返したりしないから。ま、摩耶花も警戒するくらいなら初めから話すべきじゃないよね」
「そうだね。君が初めてじゃない。みんな同じ目的だよ」
「しらばっくれても駄目さ。余所のクラスの男子が女子の事を聞きだそうっていうなら目的は一つしかないよ。それとも君は違うのかい?だったら事情を聞かせて欲しいもんだね」
「千反田さんがどんな人かってのは、僕より君の方が詳しいんじゃないかい?まあいいか。そうだね、彼女には意外性があるよ」
「そうさ。彼女は見たまんまの人だよ。美人で人当たりが良くて、いつもニコニコしている。勉強はできるし、スポーツはよく知らないけど仮にできなくたって、あのお嬢様っぷりなら欠点の内には入らないよね。でもね、あんな千反田さんにすら、びっくりするような欠点がある。そこが魅力だね」
「うーん。どうしようかな。いや、これは伏せておくよ。知りたければ千反田さんにお近づきになればいいさ、きっとあの欠点だって見せてくれる。ま、君がホータロー以上に千反田さんのお眼鏡にかなえばだけどね」
◇ ◇ ◇ ◇
「ああ、俺だけど」
「千反田?まだ来てないぞ」
「知らない」
「さあ」
「どうだろうな」
「いや、わからない」
「今月はお前で3人目だ」
「はぁ?何で俺が。妙な言いがかりはやめてくれ」
「好きにしろよ。他に用が無いなら本の続き読んでいいか?」
「ああ、じゃあな」
◇ ◇ ◇ ◇
「あの、せっかくのお話ですが、ごめんなさい」
「いえ、そう言う事では」
「ごめんなさい。そう言う気持ちには、今はなれないんです」
「そう言う人がいるってわけじゃありません。でも、どうしてそんな事を」
「そうですか、摩耶花さんと福部さんが」
「いえ、こちらこそお気持ちにお応えできなくてすみませんでした。あの……………一つだけ、聞かせてください」
「折木さんは、何と?」
(2012/07/01 公開)
こんにちは。
摩耶花の「折木よりマシ」ってどんなだ?とか思って、そのあと読んでましたww
確かにモテそうですよね、彼女。
どうしても物語が奉太郎フィルターを通しているので、出てきませんし。概算でこの先少し成長しそうな感じなので、この先に期待できるかも?ですが。
最後を読み手に想像させるところまで、作者さんみたいです!
でも、えるの最後の一言でにやにやさせてもらいました。気になるのはそこ!ですね!それで十分です。
楽しかったです。ありがとうございました。
ありがとうございます。最後の1行でニヤニヤしていただければ書いた甲斐がありました。
奉太郎ってちゃんとアタックしないと千反田さんを逃してしまうのではないでしょうか。多分彼女だと交際相手はよりどりみどりですよ。
口調と呼称のお陰で、各人台詞の一行目を切ってもイケるのが素晴らしいですね。(もっと減らしても行けそう) そして、やはり、最後の一行ですよね。比喩でなくニヤニヤが止まりません。各人一枚のイラストにこの文を添えたフォーマットも想像したり…。
コメントありがとうございます。
それぞれの口調や地の文体にはある程度気をつけています。その点を読み取っていただけて作者冥利に尽きます。